どうする? 園芸廃土(2)

 前回、園芸廃土について第1回目を掲載してから、3カ月以上が経った。この間、筆者は、このコーナーで書かなければならない土のトリートメント法について、いくつかの実験を行いながらさらなる方法論を組み立てていた。というのは、これまでの私共の方法に加え、新たに微生物資材を導入することになり、可能性の広がりを考える必要があったからだ。その資材とは50年もの長い間研究され続けてきた60種類以上のバクテリア群で、廃土処理にもかなり有望なものである。しかし、その資材がもたらすものはたんに園芸廃土の有効利用という狭い範囲でとらえるべきものではなく、農園芸全般にかかわる様々な問題解決を含んでおり、その結果、古い土とか土を捨てるとかいうことを考える必要がなくなるほどの内容を持っているものだった。
 この小さな生き物たちの話はあとですることとして、まずは、現状での園芸廃土処理法(園芸でよく言われる、古土再生法)について考えてみる。

■従来の園芸用土再生に含まれる意味

 現在、園芸書などで書かれている方法としては、土を清潔(?)な状態に回復して、腐植質を混ぜて再利用するというものがほとんどである。除去すべき要素としては、病害虫、植物のタネや多年草の根茎、さらに考え方によっては農薬や化学肥料の残留化合物や有害ガスなどがある(毒性物質を解消することを‘キレート処理’という)。処理法としては

  • 黒いビニール袋に入れて日光にさらす
  • 火を焚いて鉄板や中華鍋で焼く
  • 熱湯をかける
  • 電子レンジにかける

などが言われてきた。しかし、これらはけっしてかんたんにできるものではなく、家庭園芸などでは手間がかかりすぎるかまったくできない、あるいは、やっても意味がないものばかりである。それはけっして最善策ではなく「苦肉の策」であったということを農園芸従事者の皆さんは知っておくべきだろう。
 これらはいずれも高温状態を保って、病害虫、雑草(すでに栽培した植物を含む)の種子や根茎を死滅させるやり方で、75℃にも及ぶ高温(完全に行うには85℃程度)を一定時間保つ必要がある。しかし、筆者の実験では達成できた例はあまりなく、できても、相当手間のかかるものだった。中でも熱湯をかける方法は思ったように温度が上がらず、ほとんど意味がなかった。これは、誰かが思いつきで言った方法としか思えない。たとえば10リットルの土を85℃以上に引き上げるためには、理論的には60~70リットル以上の熱湯(95℃以上)で浸す必要がある。では、少量ならば鍋で煮ればいい?……いや、それは部分論、極論であって、何か農園芸から外れた馬鹿げた方向のように思う。問題なのは、それら方法論ではなく、なぜ病害虫や雑草を根絶させる考え方をしなければならないか、ということである。

 日本の近代農園芸産業のはじまりは比較的遅いものである。家庭農園芸*でいえば、一般の人々が土と関わりはじめたのが戦後の食糧難の頃の野菜栽培からであった。その傍らで人々は草花を愛してきた。趣味としての園芸をいっきょに全国に広めるきっかけになったのは1990年の大阪花博だと言われている。

(注*:農業、すなわち第一次産業とは、販売を目的とした植物栽培・生産をいい、花き園芸生産も含まれる。それ以外の個人レベルでの植物栽培は「家庭園芸」と呼ばれてきた。インフォグリーンでは、字義から、野菜・果物・穀類などの食糧を栽培する「農」と、草花・樹木類を栽培・利用する「園芸」を合わせて「農園芸」と呼んでいる。近年は市民農園や市民活動としての援農の動きが各地で起こり、自給自足、地域独自経済、環境保全等の取組みへの認識が高まり、植物に携わる分野を農園芸としてより幅広くトータルに捉える必要があると考えている。)

 園芸書は昭和40年代から、土壌学の専門書は昭和50年代から刊行されはじめた。園芸書には「土づくりが園芸の基本…」ということは書かれても、土の再生については触れられてこなかった。また、当初はそんなことが問題になるとは誰も考えなかっただろう。

 使用済みの園芸用土がとりあげられるようになったのはほぼこの10年来のことである。
 大規模な農園芸生産では雑草が生えたり病虫害が発生したりするような用土は絶対に使用できない。結果的に手間(人件費や資材費)がかかり、ロスが発生し、採算を悪くする。園芸書にはそんな生産効率を下げるような方法論を提示できるわけがない。
 種苗生産では常に無肥料の新しい用土が使われる。素材としては、杉など樹木の樹皮・バークチップやヤシ繊維、あるいはそれらが腐熟したコンポスト、腐熟が進んだ末期の腐葉土(黒土に近い)、黒土、ピート類、人工焼成土、山砂・川砂、市販培養土などがある。いずれも低コストのものである。一方、生産効率を高めるために育苗専用の培養土も研究されてきた。したがって、産業レベルでは、使用済みの土が再利用されるということはほとんどない。
 病虫害はどのような用土を使っても発生しがちである。ましてリスクの高い用土は利用できるわけがない。立枯れ病、軟腐苗、灰色カビ病、根切り虫、センチュウ類などは致命的かつ悲惨な結末をもたらす。だから、タネまき、育苗時に殺菌剤や殺虫剤が使われるのもまた常である。

 全般的に、園芸指導は産業としての園芸を主眼としたもので、家庭園芸での事情を十分に踏まえたものではなかった。もっとも、日本での近代園芸(またはガーデニング)のスタイルが確立していたわけではなく(それは現在も同じかもしれない)、ライフスタイルも急激に変化していったためユーザーの立場に立ちようがなかったのも事実である。そしてプロ対象の園芸手法で家庭園芸を指導するのが通常となり、そこに園芸メーカーの販売戦略が介在したこともまた否めない。
 家庭園芸向けの用土再生利用は、そのような背景で考え出された苦肉の策だった。家庭でできそうな加熱処理……すこし穿った言い方だが、決定打ではなくてもいいから無難な方法……家庭で実践して効果がありそうで、クレームが返って来ない方法が紹介されなければならなかった。その、あまりにも現実に則していない方法は一般家庭における農園芸に定着するわけがなかった。この点に触れるのはいささか面倒くさいところがある。だから「園芸用土はいつも新しいものを……」と言い続けることで場をしのいできたのだ。そして、ガーデニング・ブームが去ってみたら、園芸「廃土」が問題として残った。当然、マスコミ媒体の責任もある。

 終戦直後の復興期であれば空き地や庭などで火を焚くこともできたが、現代の、特に都市部の住宅地では、物理的にもモラル上もそのような場所はなかなかない。自治体によっては環境保全の観点から、家庭でのゴミ等の消却を条例で制限しているところもある。
 直接火を使う点では、雑草を燃やしたり土を焼いたりするガスバーナー(卓上コンロ用のガスボンベを使うもの)なども売られている。筆者もかつては通販で購入し使用していたが、これは思ったほど効果が上がらず、かならずしも土壌消毒に適しているとは言えなかった。時折アリ、ワラジムシなどの大群を駆除するのに利用することもあるが、以前、シュロの木に火がついて大慌てしたこともあり、使用を控えるようになってしまった。
 黒ビニールに入れて太陽光にさらす方法はけっこう一般的に語られてきた。しかし住宅の密集地や集合住宅では、十分な日照を得られないところもあり、思ったように効果は得られるとは限らない。そのうち扱う土の量が増えて、しだいに面倒になるのが関の山だ。その結果、投稿にあったように、こっそりコンビニのゴミ箱に捨てる、などということも起こるようになったのだろう。

 家庭農園芸では、プロ生産者ほど厳密に考える必要はないだろう。容器栽培でも露地栽培でも、不要な雑草はそのつど抜くなり刈るなりすればいい。それらは枯らしたり堆肥にしたりして、随時、土に戻してやればよいし、土中に残った根は大切な有機質となる。また、健全な栽培法と土のトリートメントを行えば、病害虫の発生も少なくなり、土は悪くならない。むしろ、年々よい状態がつくられていく。逆にいえば、よい土をつくるにはそれなりの年月と手間をかけなければならないということだ。
 では、健全な栽培法と土のトリートメント法とはいったいどのようなものなのか。結論的にいえば有機農法、自然農法に学ぶことに尽きる。そこには当然、資材が絡んでくる。少なくとも、化学農薬や化学肥料を常用・多用することでないということは言える。次回はそのあたりを掘り下げ、インフォグリーンが至った道をご紹介する。

(次回につづく)

2003.8.25

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