どうする? 園芸廃土(4)

 このトピックを扱いはじめてから早くも1年4カ月、前回の記事から9カ月が経った。延び延びになってしまったことをお許しいただきたい。公私とも諸事情で忙殺され、手をつけられなかった。
 筆者自身はNPOの活動と杉並リアルショップでは用土の再生を率先して実行してきた。最初は多少の試行錯誤があったが、かなりよい成果と見通しが出てきて、当サイトが関与するプロジェクト等では容器栽培の用土の100%使い回しは定番となっている。

 このトピックの続報として、今回は土壌の説明を行うことになっている流れだが、これは別の機会に報ずるとして、ひとまずは今回行政問題等に触れ、次回は弊社の用土トリートメントをかんたんにご紹介して、ひと区切りをつけさせていただきたい。ただ、またすぐに再開することもないとは言えない。

. 園芸廃土と行政

 まずは行政問題について、ともかく現状をまとめておこう。

 筆者は東京都多摩市に在住だが、いろいろな出会いの流れで、2003年にこの地で農園芸を主な趣旨としたNPO特定非営利活動法人たまコミュシティーを起ち上げる事になった。この活動を通じて、多摩ニュータウン環境組合リサイクルセンター センター長の任に当たっておられ、わがNPOのメンバーにもなっていただいている江尻京子さん(右写真)といろいろと意見交換をしている。ゴミ問題に関心のある方なら“ゴミニスト”(ゴミ問題ジャーナリスト)として知名度が高く、活動力がありチャーミングな彼女に雑誌やテレビ、また、彼女の著作等で出会ったこともおありかと思う。

 過日、園芸用土のゴミ処理について改めてお話をうかがう機会をいただいた。
江尻さんは10年以上も前にこのテーマについて取り上げ、行政を交えて論議したことがあったそうだ。その時はこれといった決定打も出ず、そのままになってしまったらしい。……進むわけがない……行政は人の生命や財政に関わるか、あるいはより一般的で顕著な問題でないとなかなか動けない。法に基づいて業務を執行するのが行政なのだから、法律や条例に定義や規範がない以上は新しいことをすぐに取り上げようもなく、現況の法の範囲で解釈し対処するしかない。それなら議員立法から攻めるしかないかというと、これはまたいろいろと別問題なのだ。
 筆者としては、園芸業界やマスコミの、流通に対する無責任な意識と、それに左右されざるをえない一般消費者の意識のずれが歯痒いこと、そして、自然の理に適っていない園芸の矛盾に対するやるせなさが最も大きな理由で、園芸用土の100%再利用を唱え実践してきた。多少自嘲的な言い方だが、業界的にこんな面倒で非生産的なことをやる者はあまりいないと思う(もちろん一般の園芸愛好家で当たり前のように実行している人はかなりいる)。しかし、そういうことを非営利活動あるいは市民活動で行う人間が実際に出現してきたことは、先駆的な彼女には驚きでもあったそうだ。そういうさりげない評価をいただくにつけ、また、活動を通して「素敵なこと」「いい考え方」と励ましてくださり、可能な範囲でご協力してくださる方々、実際に園芸廃土に悩んでいる方々……大概は園芸書や雑誌の記述、売店等での指導に忠実な方々なのだが……に出会うにつけ、自然物や土の循環に関する活動のメッセージ性を途絶えさせてはならないと感じる。

 江尻氏はこの問題について多摩市にヒアリングしてくださった。その談からすると、ご投稿をいただいた寝屋川市での対応が特に矛盾に満ちているわけではなく、役所なら全国どこも事情は同じだろうということだった。
 結論から言うと、基本的には自家処理、もしくは分別ゴミということになる。
 敷地に露地がある人……自治体の規則に従い、明らかに可燃ゴミ、不燃ゴミと分かるものは分別してゴミとして出し、残りは地面に積むなり埋めるなりする。
 敷地に露地がない人……燃える部分と燃えない部分を分け、それぞれ分別ゴミとして出す。可燃か不燃かが判別しがたい場合は、不燃として出すということだ。ゴミとして出す容量や重さは各自治体の規則に従わなければならないのは言うまでもない。

 この場合、園芸廃土のゴミとしての分類は以下のようになるだろうか。

  • 一般廃棄物>ごみ>普通ゴミ>可燃物>紙類、繊維、木・竹類など
  • 一般廃棄物>ごみ>普通ゴミ>不燃物>雑物

 これで万一持っていってくれない場合はその理由を業者や役所に問い合わせて、出し方を再チェックしていただきたい。その際どういう対応になるか、筆者は一切の責任を持ちかねる。なぜなら、当サイトは使用済み園芸用土をゴミとする認識はまったくなく、したがって廃棄は推奨していないからだ。

 これはどの役所でも同じはずだが、園芸廃土も大量になれば「土砂」の部類に入れることになる。そうなるといろいろとクリアしなければならない面倒な問題がある。大量の土砂を廃棄するために余計な税金を使わなければならなくなる可能性もある。ということは、有料ゴミとして一般市民が経費を負担する方向になりやすいと推測される。新しい土にお金をかけて、捨てるときにもお金がかかる……筆者ならそんな馬鹿げた仕組みをつくるために労を費やしたくはない。

. 不法投棄と不道投棄

 筆者の自宅近くの、あるゴルフ場の話だが、建設当時、敷地内の林の中に工事車両が通る林道のような小道を設けた。完成後も来客が近道として利用していたが、「私有地につき通行禁止」の立て看板があるにもかかわらず、知る者は客でなくてもここを抜け道として普段から利用しており、特に問題もなかったためゴルフ場側もこれを黙認していた。道路を挟んで、グリーンの反対側は草木生い茂る小さな谷あいになっている。
 いつからかここに冷蔵庫やソファのたぐいが捨てられるようになった。そういう情報は口伝てに広がるものだ。やがて、条例で粗大ゴミが有料化された。その途端にこの谷あいはゴミ捨て場と化していった。ゴルフ場の経営者はさすがにこれを見かねて、小道を封鎖した。
 いうまでもなく、これを称して不法投棄という。事業者や廃棄物業者がやれば重罰が科される場合がある。しかし、一般人がやった場合は、程度にもよるが、さほどのものではない。多摩市の場合「不法投棄等について注意警告等を行い改善されないものは、警察と協力し、廃棄物処理法及び軽犯罪法違反で対応を図」るという文言が公表されており、処罰の可能性を示唆している。
 例えば、このゴルフ場での廃棄物が土だったらどうか。1,000人の一般人が30リットルずつ捨てにきても、全体量は30m3。雑木林の谷あいでは山となじんでしまって廃棄物には見えないだろう。いずれ植物も生えてくるだろうし……。小さな鉢土1個ぐらいなら、ちょっとした植え込みなどにパラパラとほぐして捨てておいても分からない。たとえ、それが街路樹など公共のものであっても、隣の家であっても……。
 これも例えばだが、役所が「少しずつなら、露地面に捨てて下さい」などと言ったとする(そういうところはまずないと思うが……)。1万人の一般市民がプランター1個約10リットルずつ続々と捨てにくると、その総量は100m3……8m四方に人の背丈ほどの量になる。これが役所の植栽とか公園とかに積んであったらさすがに自治体も黙ってはいられないだろう。話としては非現実的のようでもあるが、あり得ない事ではないと思う。
 投稿にもあったように、夜中にこっそりコンビニのゴミ箱に捨てにいくとしよう。その数が増え、毎日ゴミ箱が重い土でいっぱいになっていて、いつか経営者に知れる。時々袋が破れていて、殺虫剤とも肥料ともカビともつかないものがこぼれている。経営者はおおいに困る。運の悪い一人が営業妨害で訴えられても文句は言えまい。
 100世帯入るマンションがあって、隣に広い前庭のある豪邸が建っていたとする。夜中にみんながみんなその立派な門かぶり松の根元に土を捨てにいく。そのうち家主が激怒する姿が目に浮かぶ。そのマンションが「素敵なガーデニングができます!」などとうたい文句をつけていたら大喧嘩になるのではないのか。
 これらは「例えば」の話だ。要はモラルの問題だが、道徳には社会的制裁としての罪も罰もない。これは明らかに不法投棄ではない。いわば不動投棄(不道徳投棄)とでも言ったらよいか。

 この「不動投棄」に導いてきた、あるいはちゃんとフォローしてこなかったのが業界やマスコミではないのか。雑誌では土の再生の記事を取り上げる場合もあるが、方法的には現実的ではないものもあり、また、趣旨も浸透していない。そこには、形だけ掲載しておけば責任は果たしたという安易な編集姿勢はないのか。それとも広告主に遠慮があるのか。
 筆者のショップのある杉並でも、来店するお客様は例に漏れず土を捨てている。メーカーも売店も、消耗品として売る事にご執心で、アフターフォローがまったくいい加減だ。それほどに資材もノウハウもないということなのだろうか。こういう事を記事にしていると、そのうち「土の滅菌・消毒器」などというものを比較的安価で開発して、大々的に宣伝を打つメーカーが出てくるのではないかと案じている。もしそうなったらそれこそ失笑もの。電気とかガスとか無駄なエネルギーを使って、何が自然循環か、何がガーデニングかと言いたくなるだろう、と、自身で思う。
 最近は土の再生資材の名目で出された製品もある。腐植とバイオと肥料を混ぜた(と謳っている)ものが多いようだが、ただの植物かすではないかと思われるものもある。手入れされて状態のいい土は腐葉土を混ぜただけでも用土の再生にはなる。ショップに来て下さるお客様に限って言えば、使用経験者は、土の再生資材を使ってみたが植物がうまく育たなかった、なぜ再生なのかがわからない、本当にいいの? という声がすべてだ。ある方は「育て方が悪いからだ」と東京都中野区の園芸店の人に言われたと憤慨していた。「園芸歴20年以上の私にそういう事を言うの?」とも。何を使ったのかは知らないが、お店の人にそう言わせざるをえない資材を作っているメーカーにも責任がある。これをお読みいただいている視聴者の方にも思い当たる方がいらっしゃるのではないのか? もしそうでないとすれば、何を使っても植物栽培が上手な方か、すべてをよくご存知の方だろう。とにかく、メディアでも講習でも売店でも、売るために消費者を「下手な人」に仕立て上げるのだけは止めた方がいい。

 生産事業者や初期導入の場合は別として、一般愛好家が使い回せるはずの土を捨て、常に新しい土を購入するという方法論を軸に報じてきた業界やマスコミはやはり間違っていると思う。いっそのこと、メーカーや出版社の表玄関を園芸用土の廃棄場所として公開してはいかがか。マスメディアは社会問題を引き起こす。あるいはもうそうなっている。早く方向転換すべきだ。特に環境問題や循環論を口にする場合は、結果の出る、実現可能な、ちゃんとした方法を伝える責務がある。時代がそうなってきた。
 この掲載を始めて約1年半、つい最近、インターネット通販でついに土の回収事業を開始したメーカーが現れた。言いたい事はあるが見守るのみ。

 土はあらゆるものを生み出す、捨てる必要のない(捨ててはならない)「生き物」であり、本当のサーキュレーションを成り立たせれば、土はいつまでも生きているものだ。少なくとも私はそれを実践している。

 次回(最終回)はその概要を少しご紹介する。もっとも、当サイトのインフォグリーン・ストアをのぞいていただければ、おのずと答えは出るのだが……。

(次回につづく)

2004.9.6

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