海藻の液体資材はおおまかに3種類あります。
- 海藻全草を高熱処理して(いわば佃煮のように煮込む)破砕またはすりつぶし、液化したもの
- 水溶性海藻粉末を水に溶かして還元したもの
- 生の全草を破砕して液体を分離したもの
1. は海藻の液体が大部分を占める細胞質だけでなく、細胞壁(=大部分が海藻多糖類)も含みます。海藻多糖類は加熱処理などで分子状の水溶性になります。この方法によって得られた液体は、海藻の全成分を含んだエキス資材です。多糖類を含むため、特に土壌灌水したときにバクテリア増殖に即効性を示します。 しかし、この液体は、海藻独特の性質として、濃度が濃いほど多糖類の食物繊維が固まりやすくなります。また、液体海藻の輸入は、日本から遠く離れた産地からではコストがかかりすぎます。これらの理由で液体海藻の多くは粉末にして移送されます。 近年では、海洋微生物を利用して海藻を分解する方法も開発されているようですが、それらを農園芸に導入することは、コスト、その他の点で検討される必要がありそうです。なぜなら、それらは農園芸における様々な問題を解決する根本にかかわる根拠とはなりにくいからです。 海藻への関心が高まってきた近年、北方四島沿岸あるいはその近隣沿岸にゴミで打ち上がる海藻を液化して日本に持ち込むという計画などもあるようです。国内では瀬戸内海や各地の海岸に海藻類がゴミとして打ち上がるという報告があります。それらを低コストで液化して有効利用する方法が確立されれば、農園芸の問題解決に貢献する点も多くなるように思われます。今後の動向が注目されます。 加熱処理された液体海藻は海藻の全成分を継承していますが、熱分解で減衰する成分も少なくはありません。
2. は、多くの場合、1. の液体海藻を乾燥した粉末を原料とし、これを水に溶かして還元濃縮液としたものです。この液体は濃度が濃いと多糖類が固まり(長時間放置すると水に溶けにくくなる)、薄いとバクテリアが繁殖して変質しやすくなります。ほとんどの資材ではこれらを解消するために添加物を使用します。 固まるのを防ぐためにの最も手っ取り早い方法では、有機溶剤としてエタノールが使用されます。抗菌剤としては安息香酸ナトリウム(防腐剤として食品添加物で利用されている。無臭)などが添加されます。 一部は採取地でこのような処理が施され、液体資材として輸入されているものもあります。中国や韓国でも液体肥料としてさかんに開発されてきているようですが、成分がはっきりしないものが多く、導入がためらわれます。 インフォグリーンの開発したシードリップも 2. の資材に属します。これは、ある人畜無害な、天然粘土成分のチキソトロピー効果とレオロジー物性を応用して固化を防ぎ、食物繊維質を分散させています。このため、通常よりは高濃度の液体海藻となっています。高濃度の液体海藻はそれだけでも雑菌の影響を受けにくくなりますが、念のために製造過程で85℃の高温殺菌処理を行っています。また、熱殺菌だけでなく、分散処理すること自体に菌の活動を物理的に妨げるからくりもできているのではないかという観察があり、現在解析中です。条件にもよりますが、この液材は開封後 3 年経っても腐敗または発酵していない事例があります。このような性質の海藻資材はおそらく世界でもないはずです。
3. は生きた海藻の細胞から抽出されたエッセンスです。葉が多い海藻や茎の細い海藻からは多く採取できないのですが、カジメの一種で茎の太さが8cmにも及ぶ巨大海藻からは大量のエキスが採取できます。このような海藻は1. の方法よりも細胞液の抽出のほうに利があります。 この方法では乾燥や加熱の工程を経ないため、成分をそのまま継承できます。とくに植物体内の生長調整分泌物であるオーキシン濃度が高いことは注目に値します。ナマの成分ですから、その効果は1. や2. のものよりも顕著なものがあります。成分濃度が明確であることから土壌灌水にしても葉面散布にしても、成分補給の調整がしやすくなります。また、海藻の色素はあまり含まれないため作物には着色せず、ランなどの生産調整にも利用できます。
抽出の方法には、ローラーを通す圧搾法や遠心分離法などがあります。後者は脱水機のようなものです。また、さらに効率よくエキス成分を採取するために、細胞を事前に破砕する独特な方法なども開発されています。また、エキス抽出後のしぼりかすにも成分は残留し、海藻多糖類が豊富で、堆肥原料となります。
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