1.7)モンモリロナイトの効用(7)酸性土

酸度を調節する珪酸塩白土(モンモリロナイト)

 土壌の酸性中和にはよく消石灰(水酸化カルシウム)が使われます。しかし、珪酸塩白土が酸度調整にきわめて有効なことは、園芸ではあまり一般的に知られていないようです。

 消石灰は、強アルカリを土壌に投与して酸に直接ぶつけることで中和するやり方です。これに対し、珪酸塩白土の場合は、水素イオンを吸着することによって酸度を緩和する直接作用の他に、土壌に酸またはアルカリへの急激な変化を抑制する性質(=緩衝能)を与えることによって酸度の変化を防ぐ作用がありますです。土壌に緩衝能を与える物質としては炭カル(炭酸カルシウム)がよく知られていますが、珪酸塩白土は効率と持続力の点で、炭カルに優ります。

 土壌コロイドはマイナスに荷電しています。この陰荷電には2種類、つまり酸度に影響を受けない「永久陰荷電」と、酸度によってマイナス電気を帯びる「pH依存性陰荷電」があります。いずれもイオン交換と深く関わる性質ですが、特にpH依存性陰荷電は土壌の緩衝能を高めるものであり、モンモリロナイトの約2割の分子がpH依存性陰荷電の根拠となる「破壊原子価」という構造であることは注目に値します。これは他の粘土鉱物の数倍~10倍のイオン交換の能力を持つということです。

 破壊原子価をもつ土壌としては、園芸で当たり前のように使われている、腐葉土や堆肥などの腐植質もきわめて高い能力をもっています。ただし、これは植物の遺体が分解する過程で現れる性質ですから、完全に発酵しきったボロボロの腐植土などではほとんど効果がありません。よく腐葉土は原形をとどめない程度に発酵したものがよいと言われますが、その根拠のひとつはここにあります(もうひとつは、土壌団粒化の能力の問題)。

 かつて、森の都ドイツでは、酸性雨の被害に対処するために、消石灰を土壌に大量投与した時期がありました。しかし、急激な酸度変化のために土壌バクテリアや放線菌が死滅するという二次的な障害をひき起し、使用量や頻度の上限が定められました。

 消石灰が悪いというわけではありませんが、ある程度強い回復力をもっている生きた土壌でないと、無機的な対症療法のみでは、土は耐えられないということでしょう。

 酸度の変化によって影響を受けるのは細菌や放線菌だけではありません。土壌を肥沃にするミミズはカルシウムを多く含んだ、湿潤な粘土質土壌に多いのですが、酸性土壌では数が減少します。

酸性化の原因

 土壌を酸性化する原因としては次のような事柄が挙げられます。

  1. 塩基の溶脱
    日本のように年間の降雨量が1000ミリを超える湿潤な気候では、炭酸ガスの溶けた微酸性の雨水によって、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどの交換性塩基が流亡し交換性水素イオンが増加する。
  2. 酸性物質
    排気ガス中の硫化水素や亜硫酸ガスが水に溶けて土壌に触れると強酸性の硫酸になる。
  3. 化学肥料
    硫酸アンモニウム、塩化カリウムなどを土壌に与えると、植物がアンモニウムイオン、カリウムイオンを吸収した結果、硫酸や塩酸が土壌に残留する。また、アンモニアは土壌菌に分解されて一部硝酸になる。
  4. 植物の分解
    寒冷で湿潤な気象条件下では、植物の遺体の分解が遅くなり、有機酸を発生する。

 おおかたの植物は弱酸性の土壌で生育がよく、また肥料分のリン酸は弱酸性環境で最も効率よく効くことは基本です。

 ランドスケープデザイン、ガーデンデザイン、園芸が盛んになると、扱う植物もいろいろと増えてきますが、外的な原因だけでなく、園芸の手法そのものに土壌を酸性化する要因が含まれていることは意外と意識されないものです。

 土壌の生態系を変えず、生きた土壌を常に維持することが園芸においても基礎であり、またガーデニングに携わる者の責任であることを、ガーデナーたちはあらかじめ知っておくべきだという気がします。土を生かせない者は植物を生かすこともできず、ひいては自らをも生かすことができないと断言するのは多少度が過ぎているとしても、ガーデニングもまた土と共に生きる生き方であると考えることは、また違った意味で魅力的なことだと思います。珪酸塩白土に対する私自身の関心も、根拠はそこにあるように思います

(つづく)

サイト掲載:2000.6.15




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