1.10)モンモリロナイトの効用(4)土壌生物たちとの共存

見たこともない世界

『風の谷のナウシカ』には、一種奇妙な姿をしている虫たちがたくさん出てくるのですが、そこで描かれている、ある種の非現実性はかえって自然の姿を生々しく写し出しているように思います。その非現実性がなんの根拠もないものではないことは、昆虫や微生物の世界をルーペや顕微鏡などで覗いたことのある人なら容易に理解できるのではないでしょうか。そこにはふだんはけっして目にできない、日常とかけ離れた世界があって、まさにあのアニメに出てくる虫たちの動きや表情そのものを見ることができます。

園芸は植物を相手にするものですが、虫や微生物とも無縁ではありません。
園芸でまず第一に考えられがちな植物と他の生物との関係は病虫害です。元来、病害虫に分類される生物は、けっして環境を悪くしたり、他に危害を与えるために生きているのではありません。どの生物も種を維持・繁栄させるために、生息可能な環境を選択し、生命が脅かされるときは防衛し、環境に適応した生き方をしているにすぎません。悪い環境では、そこに生きることのできる生物だけが存在するのであって、けっして生物が環境を悪くしているのでもありません。

生物の成長条件を悪化させたり、生存を阻害する因子、園芸で言えば、人間がなんらかの意志をもって栽培する植物の生存を脅かすような虫や細菌類のことをわれわれは「害」と呼び、忌み嫌います。そのような生物が、時には嗜好性をもって、能動的に園芸に関わってくることは、自然界では必然的なものでしょう。しかし、自然現象を客観的に捉えるなら、それは「害」ではなく、「淘汰」関係というほうがより正確です。

食物としての植物の生産はいうまでもなく、園芸もまた、人間が生存し、生活を営むために必要なものだとすれば、それを阻害する因子に対して防衛手段を講ずるのは当然のことでしょう。人間といえども自然界の生物の一員であることに違いはないのですから。しかし、その防衛の方法や程度は大きな問題となります。つまり、自分が生存可能となる範囲で防衛策を講じることは理にかなっているとしても、それ以外の生物、さらにはわれわれ同族のホモサピエンスに悪影響を及ぼすとしたら、それは淘汰という自然の摂理を超えてしまった過剰な処置であり、他面的には「害」となっているということです。

自然界において生物は、自己の生命を保持し、種を存続するためには外敵に対して防衛手段(攻撃を含む)をとりますが、多くの場合、敵もしくは餌となる対象以外に対して、必要以上に危害を加えることはありません。それなのに、同じ自然界の一員である人間だけが、自然のシステムを壊すような、目的範囲を超えた、たとえば土壌生物などの殺戮を許されてもよいものでしょうか。自然のシステムを破壊する者はやがて自然のシステムに淘汰されていくはずです。そんな大袈裟なことを、私は園芸に携わりつつ感じます。

キンポウゲ科トリカブト属の多年草に、根が猛毒をもつことで知られるトリカブトがあります。これを加工して毒性を少なくしたものを附子(ぶし)といい、漢方では新陳代謝の亢進、利尿、強心、鎮痛などの作用をもつ重要な生薬として用いられています。
このように毒は微量を用いる場合にたいへん有効な薬となることがあります。過剰を減じ、不足を補うのが漢方薬の基本ですが、時としてこのような毒を用いるのです。毒をもって毒を制することは東洋医学でも重要な考え方です。微量の毒を有効利用する場合は薬といいます。しかし、過剰なものはあくまでも毒にすぎません。それはそのまま、園芸にもあてはまるように思います。

病虫害の問題は、自然体系のなかではほんの一側面にしかすぎません。しかし、人間にとってはときとしてはやっかいな……。

自然界には、植物にとってのマイナス因子とプラス因子もあり、エコシステム(生態系)において重要な役割を担っています。そのプラス因子として、土壌生物は最重要のひとつです。

自然淘汰の中では強者が生き残りますが、強者には2つのタイプがあります。ひとつは攻撃力に優れた強者、もうひとつは防御力(蘇生力、繁殖力を含む)に優れた強者です。植物の場合は後者を考えればよいでしょう。

植物の防御力を高める要因としては日照と土壌が重要です。そして、土壌要素として土壌生物は重要な役割を担っているのです。おもしろいのは、プラス因子が勢力を増すと、往々にしてマイナス因子が駆逐される傾向にあることです。これは園芸においてうまく応用されるべき自然の摂理です。

ふだんはごく一部分しか目にすることがないのですが、土の中にはたいへん多くの土壌生物が棲んでいます。そのうちの何種類かが土壌、すなわち植物にとって有益な存在です。その代表的なものを挙げようと思います。

(つづく)

サイト掲載:2000.7.7




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