1.12)土壌生物たち(2)土壌微生物

目に見えない生物たち

土壌動物とは、前号お話したように、土を生活基盤とする節足動物、環形動物(ミミズ)、袋形動物(線虫)、原生動物などをいいます。

ミミズは近年、ニュージーランドやアメリカなどで土壌改良要素として養殖され、日本でも輸入されているようです。しかし、腐植質や厩肥(家畜の排泄物にワラなどを混ぜて発酵させた肥料)を土に入れればミミズは放っておいても殖えるものなので、いったいどういう事情の人たちが導入しているのか、導入しなければならない土壌とはどのようなものなのか、ちょっと様子が分からないだけに得体の知れない気味悪さを感じます。

さて、土壌生物のもう一つは、土壌微生物と呼ばれている一群です。

環境によっても異なりますが、土壌1グラムには数十億もの微生物が住むといわれます。そのなかでも重要なものが細菌、放線菌、糸状菌、藻類です。これらは大きさがミクロン(1000分の1ミリ)単位なのでひとつひとつを肉眼で識別することはできません。

一般に土壌菌といわれているものは細菌、放線菌、糸状菌の3つをいい、これらは三大微生物と呼ばれています。
細菌は直径1ミクロン前後、長さ1~8ミクロンの単細胞生物で、二つに分裂して増殖します。細胞核は核膜、および、呼吸やエネルギー生産に関与するミトコンドリアを持たない原始的な構造です。
糸状菌はいわゆるカビのことです。直径5~10ミクロンの菌糸が枝別れして伸び、分岐した柄の先端に胞子ができます。糸状菌には核膜やミトコンドリアがあります。菌糸の長いものでは数百メートルに及ぶものもあるといわれています。
形状の点で糸状菌と細菌の中間的な存在が放線菌です。放線菌の直径は細菌と同じ1ミクロン程度で、核膜やミトコンドリアもありませんが、菌糸が枝別れして伸び、菌糸の切れ目や特定の部分に1個~数個の胞子をつくる形は糸状菌に似ています。

細菌

細菌は生物界のなかでは最も微小な生き物です。養分の摂取の仕方で、植物遺体などの有機物を分解・吸収する有機栄養細菌(従属栄養細菌ともいいます)と、チッソや鉱物元素など無機物の酸化、または光合成によって活動のエネルギーを得ている無機栄養細菌(独立栄養細菌)とに分かれます。

また、別の観点では、酸素の必要度によって、大まかに好気性細菌と嫌気性細菌に分かれます。植物遺体を分解するものの多くは好気性細菌です。土壌には破傷風菌や、食中毒で有名なボツリヌス菌など、毒素を持つ細菌も存在します。これらは無酸素下で発育する典型的な嫌気性細菌です。大腸菌も嫌気性細菌ですが、多少酸素が存在しても生育できる種類です。

さまざまな細菌の生育には、それぞれの好適環境があります。なかには乾燥や高温、低温などの過酷環境を生き延びるために胞子を形成するものや、高温を好む好熱性細菌なども存在します。
最近、家庭園芸でも注目されている堆肥づくりは、土壌を肥沃化する方法として、戦前まではごく当たり前に行われていたようですが、それは細菌のはたらきを巧みに利用した、じつに合理的な土壌メンテナンス法でした。

堆肥は、落葉やワラ、樹皮などの植物遺体をそのまま、あるいはチッソ成分や厩肥などを加えて発酵させた腐植質です。
堆肥処理の初期には好気性の有機栄養細菌が有機物(つまり炭水化物、タンパク質、脂質などからなる植物遺体など)を分解しはじめ、その放出エネルギーのために、数日のうちに内部が最高で摂氏60~70度という高温になります。この環境では好熱性細菌だけが活動し、2~3週間、持続します。これだけの高温が続くと大腸菌は死滅します。もちろん悪玉の嫌気性細菌も生息できません。そして、ひと通り好熱性細菌による高温分解が終わると、今度は別の細菌群によるおだやかな発酵が進み、有機物質は土壌菌の豊富な堆肥として熟成していきます。

土壌細菌は、有機質を分解する種類だけでなく、空気中のチッソをタンパク質として固定したり、アンモニア、イオウ、鉄、マンガンなどの無機元素を酸化するなど、土壌生態系における物質循環に重要な役割を担うものもあります。堆肥などの腐植質は、団粒構造の向上という機能を持つほかに、これら土壌菌を養う素となるわけです。

(つづく)

サイト掲載:2000.7.8




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