1.13)土壌生物たち(3)-土壌微生物

糸状菌

土壌微生物のなかで最も大きな組織を持つものが糸状菌、いわゆるカビです。糸状菌もまた、土壌環境と密接な関係がありますが、現在、重要なのは数種類とされています。

土壌に有益な糸状菌は、植物遺体の糖類やセルロース、リグニンなどを分解する種類です。セルロースは多糖類の一種で、紙の原料となる繊維素、リグニンは木質素ともいわれる細胞間物質で、植物の細胞を硬化させます。よく園芸書などで、草本類の植物が木質化して云々、といわれますが、これはリグニンによるものです。

木の枝が混じっている腐葉土などで、クモの巣のような菌糸が絡んでいるのを目視できることがあります。これはセルロース分解糸状菌やリグニン分解糸状菌であることが多く、植物の害となるものではありません。

これに似たもので、病害糸状菌による白絹病があります。白絹病は植物がないところでは菌核で潜伏し、植物があると菌糸を出して地際から植物に侵入します。白い絹糸のような菌糸が患部から土壌中にのびて土壌表面にまで蔓延し、株元の腐敗や根ぐされをひき起こし、植物を枯死させます。特に夏、地温が高いときに多発します。

放線菌

細胞の構造や大きさは細菌類と似ているのに、糸状菌のように菌糸が伸び、胞子をつくる微生物が放線菌です。

土壌1グラム中には、細菌類が1000万、放線菌が100万、カビが1万生息しているといわれています(環境により異なる)。

放線菌は細菌類やカビ同様、医学でも重要な存在で、ストレプトマイシン、クロロマイセチン、テトラサイクリンなど抗生物質の製造に関与しています。治療薬以外には農薬などに利用されるものもあります。
話題のEM菌なども放線菌の一種で、有機質をよく分解し、肥料効果を高めることで知られています。

「土壌動物」で述べたように、センチュウには病原である寄生性のネコブセンチュウやネグサレセンチュウなどがあります。数は活動性のものよりははるかに少ないのですが、植物に及ぼす悪影響は甚大で、これに冒された苗、タネイモ、球根などが感染源となり他の土壌に感染します。放線菌は寄生性センチュウの防除にも重要な役割を持っています。

カニの甲羅などに多く含まれているキチンやキトサンを分解する微生物のほとんどは放線菌です。放線菌は土壌中のキチンやキトサンを分解するときにキチナーゼ、キトサナーゼという酵素を分泌しますが、これらの酵素がネマトーダの細胞膜を破壊するのです。

藻類

以上、細菌、放線菌、糸状菌が三大土壌微生物と呼ばれるものです。このほか、有益な土壌微生物として藻類があります。藻類は直径3~50ミクロンの単細胞生物で、鎖状に連なっているか糸状の形をしています。緑藻、ラン藻、ケイ藻がおもなものです。大部分はクロロフィルを持ち、光合成によって炭素を固定する独立栄養生物で、他の土壌動物のエネルギー源(エサ)となります。また、ラン藻はチッソを固定する能力をもっています。

土壌生物(土壌動物と土壌微生物)は、食物連鎖などにより互いに緊密な関係を持ち、エネルギーを循環し、物理的、化学的に植物の生育に適した土壌環境を形成しています。

日本は集約的ガーデニング志向?

土壌生物が植物にとって大切な存在であることはおおむね概観していただけたと思います。ただ、一方では、病虫害の因子もまたこれらと同レベルの生物であることを忘れてはなりません。それらの重要ないくつかは、卵、サナギ、胞子、菌核などといった形で土壌に潜伏しています。要は、悪玉を極力除去し、善玉が悪玉を制裁し、また悪玉を目覚めさせず、植物そのものをじょうぶに育てる安定した環境を得られれば、園芸上のトラブルは少なくなるのですが、そこに問題があります。

日本の場合、たんにガーデニングスペースという問題に限らず、鉢植えや寄植え、ハンギングなどのコンテナ栽培が好まれる傾向があり、本来はデコレーションとして利用されるものが、日本ではコンテナガーデンなどメインになることもしばしばあります。容器栽培では、少ない用土で栽培するため、しょっちゅう水や肥料を与えなければなりません。いわば集約農業ならぬ、集約園芸です。この状況では適切な安定した土壌環境を維持するのはかなりむずかしくなります。

(つづく)

サイト掲載:2000.7.8




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